愛知県美術館で開催されていたこの展覧会は、個人的に大当たり。「いいもの見せて頂きました」と素直に頭を下げてしまうほどいい絵が並んでいた。
昨年からかなり気にはなっていたのだが、なかなか見に行くチャンスをつかめず、最終日にようやく滑り込むことができた。有名度の違いか、モネ展ほどの混みようではなかったが、真剣に鑑賞する人は、ワイエス展の方が多かった。製作過程がわかるように、習作もあわせて展示されているためだろう。美術部の娘も勉強になったと言っていたし。
この画家の絵の特徴をひと言でいうならば、被写体のすべてに物語が隠されているということ。逆に画家にとって物語性を見出せない事物は絵の対象とならない。一見、リアリズムに徹した画風に思われるが、ただ、事物の表面をなぞるのではなく、被写体に物語を織り込んでいるので非常に深みのある絵になっている。
例えば、納屋の木桶ひとつとっても、それがどんな時にどうやって使われていたのか、さらにはそれを使っていた人の人生まで偲ばれるほどの描写力なのだ。
絵を見れば見るほど、ワイエスという画家は、非常に鋭い観察眼と深い感性と、決して冷めることの無い「絵を描くこと」への情熱を持ち合わせていたのだなあと感じ入った。
こういう絵には、一人でじっくり向き合い、いろいろ考えをめぐらせてみたいと思う。
アンドリュー・ワイエスについてはこちらが参考になります→
http://fumi-hitohira.hp.infoseek.co.jp/wyeth01.html